フードバンクとは
フードバンク活動全体像
フードバンクとは、安全に食べられるのに包装の破損や過剰在庫、印字ミスなどの理由で、流通に出すことができない食品を企業などから寄贈していただき、必要としている施設や団体、困窮世帯に無償で提供する活動です。
フードバンクは、アメリカでは1967年に開始され現在では200以上のフードバンク団体が活動しています。また、フランスでは1984年に開始され現在では100近くのフードバンク団体が活動しています。他にも、カナダ、イギリス、オーストラリアなど世界中の様々な国でフードバンク活動がおこなわれています。
日本では2000年以降フードバンクが設立され始めましたが、フードバンク活動の背景となる「食品ロスの問題」「貧困問題」への認識が十分に浸透していないこともあり、まだ活動が十分に認知されているとは言い難い状況にあります。
「いただきます。」その声を聴く前に捨てられる食品 -年間約646万トンー
日本では年間約1,927万トンの食品廃棄物が排出されています。その中にはまだ十分食べられるにもかかわらず廃棄されている食品、いわゆる「食品ロス」が多く含まれています。食品関連事業者からは約357万トン、一般家庭からは289万トン、合計すると年間約646万トンもの食べ物が、まだ食べられるにもかかわらず廃棄されています。
これは、世界全体の食料援助量(2014年、320万トン)の約2倍に匹敵する量です。
食品ロス問題
食品廃棄物等の発生量(平成27年度推計)
出典:「食品ロスの削減に向けて ~食べものに、もったいないを、もういちど。~」農林水産省 平成28年度版
何故こんなに多くの「食品ロス」が排出されるのでしょうか。その原因は様々ですが、「日本の食品流通業界の商習慣である「3分の1ルール」も要因の一つとされています。
『3分の1ルール』とは
メーカーから卸売り業者を通じて小売業者に納入されるまでの期限は、製造日から賞味期限までの期間の3分の1までとするルール。また、販売期限は製造日から賞味期限までの期限の3分の2までとされ、その期間を過ぎると賞味期限内であっても店頭から撤去され、返品や廃棄されるのが一般的です。
海外でもこのような納品期限は存在していますが、たとえば、米国では2分の1、フランス、イタリア、ベルギーは3分の2、英国では4分の3となっており、日本の3分の1は国際的に見ても短いと言えます。
出典:「食品ロスの削減に向けて ~食べものに、もったいないを、もういちど。~」農林水産省 平成28年6月
また、以下に示す一例のように、 3分の1ルールだけでなく消費者の安全性を求める声を過剰に意識した結果、食品が大量に廃棄されてしまうケースも発生しています。
フードバンク団体は、活動を通じてこのような経緯で発生する食品の有効活用をおこなうことで、食品ロスの削減に貢献しています。
①包装破損
食品の製造・流通の過程や販売段階で、過失により包装が破損するなどして商品として販売することが難しくなった食品。
②印字ミス
印字内容に誤りがあったり不鮮明であるなどして、法的に必要な記載事項が不足しているため、店頭に出すことができなくなった食品。
③過剰在庫
季節性の高い商品や、需要の見誤りなどによって過剰に仕入れた商品など、在庫として抱えても販売が困難なことが想定される食品。
④規格外品
規格外で流通に出すことができない生鮮食品。
貧困問題
貧困世帯で暮らしている子どもの数 ー7人に1人ー
日本は、OECD諸国の平均と比べて「相対貧困率」が高くなっています。相対的貧困率は、国民全体の所得の「中央値」に対してその半分に満たない所得の世帯人数の割合を示す数値で、所得格差の大きさを表すと言われています。
貧困率は地域によっても差がありますが、貧困率の高い地域の貧困率が下がらないだけでなく、貧困率が低かった地域の貧困率の上昇率も高まっています。このように、貧困率は「高位平準化」され地域を問わない課題となりつつあります。
「相対的貧困率」の推移
出典:平成28年度「国民生活基礎調査」厚生労働省 を基に作成
都道府県別貧困率上位/下位10地域における貧困率の推移
出典:戸室健作「資料紹介 都道府県別の貧困率、ワーキングプア率、子どもの貧困率、捕捉率の検討」山形大学人文学部研究年報 第13号(2016.3)P33-53を基に作成
このように、日本の貧困問題は年々深刻となりつつあり、貧困世帯で暮らす17歳以下の子どもは全国で280万人余りに上り、子どもの7人に1人の割合となっています。
「子どもの貧困率」の推移
← 子どもの7人に1人
出典:平成28年度「国民生活基礎調査」厚生労働省 を基に作成
7人に1人の子どもが親の収入が少ないことが理由で、あって当たり前のものが貰えなかったり、経験する機会を奪われてしまっています。こうした環境は中長期的には「貧困の連鎖」を生み出すことが危惧されます。
経済的に困窮して日々の生活に困る世帯も多く、学習塾などの教育費用の捻出は更に困難で、十分な教育の機会が得られているとは限りません。このように、親の収入や就業状況が子どもの学力に影響し、その子どもの将来にも大きく影響しています。
子どもの貧困の解決にはこのような親の世代から続く貧困の連鎖を断ち切る必要があります。政府も平成26年8月に「子供の貧困対策に関する大綱」を閣議決定し、貧困対策に取り組み始めています。大綱の中では「教育の支援」の他にも「生活の支援」などが掲げられています。フードバンク団体は、子どもや保護者の食生活への支援を通じて貧困対策に貢献しています。
フードバンク団体の主なアプローチ
地域住民との連携
食品の寄贈は、食品を取り扱う企業からだけではありません。フードバンク活動では、広く一般家庭からも食品の提供を呼び掛けています。
その活動の一つに「フードドライブ」があります。フードドライブの「ドライブ」は活動や運動という意味であり、food(たべもの)、drive(運動)で、「食べ物を集める運動」という意味になります。フードドライブは各地域のフードバンク団体が行政窓口や公共施設、NPO法人、社会福祉協議会などの事務所に食品の回収BOXを設置し、実施しています。全国フードバンク推進協議会では全国フードドライブキャンペーンの呼び掛けやノウハウ支援などを行っています。
行政との連携
フードバンク活動を推進する上で、行政との連携は欠かせません。寄贈を受けた食品の提供先には様々な施設がありますが、それらの施設に入っていないシングルマザーや子供、高齢者などの世帯もいます。地域の中で孤立し、見えにくい困窮世帯を支援するには、行政との連携が必要不可欠です。また、フードドライブ活動などをおこなう際も、行政と連携していることでより円滑かつ広範に活動を進めることができるようになります。
子どもの成長への支援
フードバンク活動は、いま目の前にある「食品ロス」「貧困」の解決に取り組んでいるだけではありません。一人でも多くの子どもが健康で活き活きした大人になることを支援したい、そんな将来の日本のための活動でもあります。
フードバンク活動は、貧困で十分な食事をとることができない貧困世帯の子供への食料支援を通じて子ども達の成長を支援しています。